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東京地方裁判所 平成7年(行ウ)94号 判決

東京都中央区月島三丁目二一番一一号

原告

柳町シン

右同所

原告

柳町晴司

右両名訴訟代理人弁護士

細谷義徳

仲谷栄一郎

上野攝津子

山下朝陽

高取芳宏

池田成史

東京都中央区新富二丁目六番一号

被告

京橋税務署長 浪川武

右指定代理人

渡辺進

太田泰暢

石黒邦夫

江口庸祐

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告が原告柳町シンの平成元年分所得税について平成五年三月一一日付けでした無申告加算税賦課決定を取り消す。

2  被告が原告柳町晴司の平成元年分所得税について平成五年三月一一日付けでした過少申告加算税賦課決定を取り消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告柳町シン(以下「原告シン」という。)は、平成元年分所得税について確定申告書を提出しなかったところ、被告は、平成五年三月一一日、原告シンに対し、同年分所得税について譲渡所得の金額を一億〇五八七万五〇〇〇円、納付すべき税額を二四三八万一二〇〇円とする決定をするとともに、無申告加算税三六五万七〇〇〇円を賦課する旨の決定をした。

2  原告柳町晴司(以下「原告晴司」という。)は、平成元年分所得税について法定申告期限内に確定申告をしたところ、被告は、平成五年三月一一日、原告晴司に対し、納付すべき税額を一三万二〇〇〇円とする更正をするとともに、過少申告加算税一万四〇〇〇円を賦課する旨の決定をした(以下、原告シンに対する無申告加算税の賦課決定及び原告晴司に対する過少申告加算税の賦課決定を一括して「本件各処分」という。)。

3  原告らは、本件各処分を不服として、平成五年五月一〇日、被告に対し異議申立てをしたが、棄却されたため、平成五年八月三〇日、国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、原告シンに対しては平成六年六月二七日付けで、原告晴司に対しては同月三〇日付けで、それぞれ棄却の裁決(以下「本件各裁決」という。)がされ、原告らは、平成七年二月一〇日、本件各裁決の裁決書謄本の送達を受けた。

4  しかしながら、原告シンが平成元年分所得税について確定申告をしなかったこと及び原告晴司の同年分所得税の確定申告が過少であったことについては、いずれも「正当な理由」があるから、本件各処分は違法である。

5  よって、原告らは、本件各処分の取消を求める。

二  被告の本案前の主張

行政事件訴訟法十四条一項によれば、処分の取消訴訟は裁決があったことを知った日から三か月以内に提起しなければならないとされているところ、本件各裁決の裁決書謄本は、原告シンに対しては平成六年七月二日、原告晴司に対しては同月五日、されぞれ送達されているから、原告らは、右各日に本件各裁決があったことを知ったものというべきである。そうすると、原告シンにといては、平成六年一〇月三日(同年一〇月一日が土曜日であるため、出訴期間の満了日は一〇月三日となる。)、原告晴司については、同月四日の各経過をもってそれぞれ法定の出訴期間を経過することとなるところ、原告らの本件訴えが提起されたのは平成七年五月八日であるから、本件訴えはいずれも不適法な訴えとして却下を免れない。

三  本案前の主張に対する原告らの反論

本件各裁決の裁決書謄本が、原告シンに対して平成六年七月二日、原告晴司に対して同月五日、それぞれ送達されたとの事実は否認する。原告らは、平日の昼間は通常外出しており、郵便物を受取ることができない。原告らは、本件各裁決の裁決書謄本の送達がなかったので、平成七年一月上旬、国税不服審判所に照会した結果、本件各裁決がされているとの回答を受け、同年二月一〇日にその送達を受けたものである。

第三証拠

本件記録中の書証目録記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

一  成立に争いのない甲第三号証、第六号証、乙第二号証の一ないし三によれば、原告シンに対しては平成六年六月二七日付けで、原告晴司に対しては同月三〇日付けで、本件各裁決がされ、その裁決書謄本は、原告シンに対しては平成六年七月二日に、原告晴司に対しては同月五日に、それぞれ郵便により配達されていることが認められる。

右事実によれば、原告らは、裁決書謄本が配達された右各日にそれぞれ本件各裁決があったことを知ったものを推認するのが相当であるところ、本件訴えが提起されたのが平成七年五月八日であることは本件記録上明らかであるから、本件訴えは、いずれも行政事件訴訟法一四条一項所定の出訴期間を徒過したものとして不適法であるといわなければならない。

二  よって、本件訴えをいずれも却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤久夫 裁判官 徳岡治 裁判官橋詰均は、転補のため、署名捺印することができない。裁判長裁判官 佐藤久夫)

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